タイ人の妻が昨年、日本で亡くなりました。その後まもなく、国際弁護士から遺産相続権があると宣誓書が送られてきました。妻は私と結婚する以前に結婚はしていないし、兄弟姉妹もいないと言っていたのですが…。妻の生前、私と妻の名義で購入していた日本にある不動産を私名義に変更したいのです。ところが法務局から、子どもたちから遺産相続をした証明書を提出するようにと言われています、でも私たちに子どもはおりません。私はどうすればよいのでしょうか。
御質問内容を拝見させていただきました。奥様がお亡くなりになられたということでお悔やみ申し上げます。
相続が生じていることから、複雑な手続が予想されます。御客様のもとへ国際弁護士から書面が通知されてきたということで、まずは当該国際弁護士に連絡をとり、亡くなった奥様(以下「亡き奥様」と呼称します)の相続人であることを主張している者を特定することが先決事項ではないでしょうか。相手は弁護士ですので、当然に相続を主張する者の代理人として御客様へ通知書を送付してきているはずです。なお、弁護士であることから確たる証拠のもとで代理人を受任していることが予想されますので、御客様以外に相続人(亡き奥様の子、直系尊属、兄弟姉妹)がいることは間違いないのではないかと考えられます。正当な相続人であるか否かは、タイの出生登録証(バイ・クー)や住居登録証(バイ・タビアンバーン)の記載内容からも確認することができると思われます。
日本国内に御客様と亡き奥様の共有の不動産が存在するということですが、法務局職員のおっしゃるとおりで、当該共有不動産の亡き奥様の持ち分を御客様の名義にするためには、相続人間で遺産相続をした証明書、すなわち遺産分割協議書を作成する必要があります。そして、亡き奥様に配偶者(御客様)以外の相続人がいないのであれば、相続人が他にいないことを証明しなければなりません。
御客様が共有する不動産の所有の状態は、仮に他に相続人がいたとすると、亡き奥様の持ち分を相続人間で共有している状態にあります。これは日本の民法で「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する」と定められていることに因ります。従って、共有者である他の相続人の承諾なしに、相続財産たる亡き奥様の持ち分を勝手には移転することができないのであります。
以上のことを踏まえまして、御客様におかれましては,まずは国際弁護士とコンタクトをとり相続人を確定させ、その真偽を確かめる必要があります。そこで疑義が生じるようであれば、やはり御客様も弁護士を選任し主張していく必要があります。相続人の存在が疑いようのない事実である場合には、御客様と共同相続人との間で遺産分割のための協議を行ない、遺産分割協議書を作成されてください。これらの手続を経て、不動産の名義変更手続となります。
いずれにしましても、相続手続は極めて複雑なものでありますので、法律家への相談・依頼を推奨いたします。