【質問】
こんにちは。私はタイレストランを経営しています。今、日本語学校に通う留学生が資格外活動許可をもってホールスタッフとしてアルバイトしています。彼女はタイで大学を出ています。彼女が日本語学校を卒業したら<技術・人文知識・国際業務>ビザに切り替えて、引き続きホールスタッフとして働いてもらいたいと思いますが、大丈夫でしょうか?
周りに聞いてみると、<技術・人文知識・国際業務>ビザをもってホールで働く外国人は多いといいます。また、「簡単にビザが取れる」という人もいれば「ビザを取ろうと思ったけど、不許可だった」という人もいます。不安になります。
※上記質問は以下解説のために創作されたものです。
【解答】
サワディーカップ!長岡です。
ホールスタッフとして働かれている方はきっと非常に優秀で、いつも一生懸命に仕事をしてくれる方なんだと思います。素晴らしい方にこれからも働いてほしいという気持ちも分かりますし、経営者の愛情も伝わります。私も同じ境遇にあったら、社長と同じように悩むでしょう。
結論から申し上げます。<技術・人文知識・国際業務>ビザでは、原則としてホールスタッフとして働くことはできません。このビザは大学や日本の専門学校を卒業した方が、修得した学問的知識を活用して仕事を行うものです。または外国文化特有の思考や感受性を必要とする仕事(通訳業務もここにあたります。)でなければなりません。
レストランのホール業務は一般的に学問的知識が必要とは考えられません。なぜなら、勉強途中である学生もできる仕事だからです。仕事の良し悪しはきっと学問的知識によるものではないのでしょう。また、「キッチンのコックさんはタイ人でお客さんは日本人だから、通訳の仕事をしている」と言う人もいますが、ただ単に通訳をすれば良いというものではなく、学問的知識を必要とする業務と同程度のレベルの高い通訳業務である必要があります。レストランのホールでは日本語能力が低い方でも務まっているようです。その点からもホール業務が<技術・人文知識・国際業務>ビザであると認められることは無いでしょう。
「店長としてお店やスタッフの管理もします。これなら大丈夫ですか?」と言う人もいますが、店長が本当にお店の経営や管理業務だけをするのであれば<技術・人文知識・国際業務>ビザにあたる可能性はありますが、通常はホール業務やキッチン業務を兼任しています。その場合、<技術・人文知識・国際業務>ビザは認められません。
では、なぜホールスタッフとして働く方がいるのかというと、端的に言えばビザをもらうために入管に正しくない情報を伝えた可能性が高いでしょう。また、「事務所で事務仕事をするといえば入管は簡単にビザくれるよ。ビザもらったらホール業務やれば大丈夫」と間違ったアドバイスをする人もいますので気をつけてください。「バレなければ大丈夫」かもしれませんが、バレたら大変なことになります。不法就労罪と不法就労助長罪は刑事犯罪です(「知りませんでした。」では一切罪を免れることはできません。そういう法律です。)。特に外国人の方は退去強制にもなる可能性もあります。
例外的に<技術・人文知識・国際業務>ビザでもホールで働くことができる場合があります。それは、本社でスーツを着て働くような社員も入社時には実務研修として一定期間に限定して店舗での研修を必要とする場合で、大規模チェーン店のようなキャリアステップ制度を会社が採用している場合です。タイレストランの業界では少ない事例です。
レストランのホールで働くことを許された就労ビザは上記の特殊な例を除けば、<特定活動46号>というビザで日本の四年制大学または大学院を卒業し、日本語能力N1(またはBJT480点以上または本国の大学で日本語を専攻し卒業したこと)を持っていることが条件となります。そのほか、外食業としての<特定技能>ビザとなります。特定技能ビザで従業員を雇用するためには会社は社会保険や雇用保険等の完備の他、過去1年以内、店舗スタッフの正社員を会社都合で解雇していないこと、特定技能1号で雇い入れた従業員を適切に支援する体制を整備する等、特別な社内体制整備が必要となります(ここでは紙面の関係上、詳細は避けます。)。事務手続きやコンプライアンス体制の構築についてやり方を根本から変えなければならない可能性があります。
日本人では問題とならないような外国人雇用の悩み、理解できます。従業員への愛情があるからこそ悩むのだと思います。しかし、法律をきちんと理解して、外国人を適正に雇用しなければ、会社の未来、従業員の未来に大きく影響するような大きなしっぺ返しがあるかもしれません。入管は見ています。気をつけましょう。