私は今タイレストランを経営していますが、最近売上が伸びずに悩んでいました。そのことを知人に打ち明けると、その人の友人でタイレストランを経営したい人がいると言われ紹介してもらいました。話をしてみると、条件も悪くないのでその人に店の権利を売ることにしましたが、何か問題はあるでしょうか? また、その際どのようなことに注意すればよいでしょうか?
あなたのお店は自己所有なのでしょうか、それとも賃貸なのでしょうか? そのあたりがはっきりしませんが大抵の人は賃貸契約だと思いますので、賃貸物件という前提で話を進めます。
まず、貸している人(大家)の承諾を得る必要があります。民法612条に書いてありますが、黙って他人に貸したときには契約を解除されても文句がいえなくなります。また、新しく借りた人が万一家賃を滞納した場合、大家との契約者はあなたですから、当然あなたに家賃請求がきますし、あなたはそれを拒否できません。(ただし、支払った後その人にあなたから請求することは可能です。)
以上の点からやはり最初に大家に相談しましょう。大家とあまり親しくないときは、仲介している不動産屋に相談します。今まで家賃の滞納やトラブル等がなければ、新たに借りる人が大家に家賃の1~2カ月分の保証金を払って許可をもらうケースもあるようですが、多くの場合は新たな借主と大家で再度契約書を結ぶことになります。そうすれば、万一家賃の滞納があってもあなたに請求がくることはありません。(保証人になっていれば別です。)大家が承諾していても新たに契約書を結んでいない場合、家賃の滞納があれば大家はあなたにも請求できます。あなたがいくら「大家さんも承諾したのだから本人に言ってくれ」と文句を言っても、これも民法613条に規定されています。大家から承諾をもらったあとは当人同士で契約を再度結んでもらいましょう。
次に気をつけることはお金の問題です。あなたは最初に契約をしたとき、大家に保証金を渡しているはずです。この保証金は契約を解除したとき家賃滞納や店の使い方に問題がなければ、通常預けた金額の70%前後が返金されます。しかし、今回のケースでは返金されないはずです。今度借りた人が営業を継続するのに、もし保証金をあなたに返還してしまったら先ほど書いた1~2カ月分の保証金しか大家の手元に残らないからです。通常解約したら戻ってくるはずの保証金分や最初にかかった内装費等を、相手の人に請求することが一般的だと思います。
一般的な順序は次の通りです。①大家の承諾を得る。②新たな借主とお金の交渉をする。③最終的に大家と新たな借主とで契約を結んでもらう。
あなたと借主とのお金のやり取りの方法は当人同士で話し合ってください。ただし、大家からあなたの提案を拒否されることもあります。それはあなたに原因がある場合もあれば新たな借主に原因がある場合もありますが、その時は仕方ないことと思ってください。質問では“店の権利を売る”と書いていますが、賃貸物件であれば現在あなたの持っている権利はあなた自身がその物件を契約の範囲内で使用できるというものであって、人に貸してもいいという権利までは持っていないということを理解しましょう。無断で他人に物件を貸したり、被害をこうむったりしないように注意してください。また、今回書いたことはレストラン以外でもマッサージ屋、洋服屋等業種を問わず、すべての賃貸物件に共通していえることですので他の業種の人も参考にしてください。