バンコク都庁の発表によると、2019年12月31日を期限に、バンコク都内の900ヶ所を越える地域で屋台と露店営業の一斉取り締まりが行われるらしい。これにより2万軒以上の屋台や露店に影響が出るという。何年か前にも大々的な屋台撤去作戦が実行されたが、対象となったエリアのほとんどは軍事政権賛成派の地元だった。今回は、それよりも広いバンコクの全域での一斉取り締まりになる。
舗道上を占拠する屋台や露店を取り締まり、歩行者や車椅子の利用者に便宜をはかるという大義名分は正しい。一国の首都の路上が屋台に埋もれているのはみっともないと判断するのもまた正しい考え方だ。しかし、タイの景気は悪くなっている一方なのに、こんなことをして大丈夫なのだろうか。
取り締まるのはかまわないが、取り締まられる側への配慮がないのがタイという国だ。2万軒の屋台や露店で働く人たちの総数は10万人以上になるという。12月末を期限に職場を奪われる彼らはいったいどこに行くのだろう。代わりの場所は与えられるのだろうか。不動産価格が一方的に上昇を続けるバンコクで2万軒の屋台が営業できる場所など、そう簡単に見つけられるとは思えない。
バンコク都内の全域で取り締まりを始める一方で、観光客の集まるシーロム通り、カオサン通り、チャイナタウンの一帯での屋台や露店営業は認められるという。外貨を落とす外国人観光客には配慮を示したわけだが、都内にいるのは観光客だけではない。たとえば朝夕の買い出しは一般庶民の日常だが、その場を奪われた彼らはどこで食事や日用品を調達するのだろう。遠く離れたスーパーマーケットまで車に乗って買い出しに行く? そんなことのできる人たちばかりではないはずだが、そのあたりのアドバイスもやはり出ていない。
現在の景気状態を無視した強攻策に、政府がバンコク都庁に介入するという声も聞かれる。いまのところはっきりした動きはないが、2020年の新年早々どのような事態になるのか、バンコク都民でも屋台経営者でなくても気になるところだ。
カオサン通りの北にある衣料品主体のバーンラムプー市場。この市場も風前の灯火。
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