タイ人の友人が自身の所有するコンドミニアムを売りたがっている。転売目的で購入したのだが、買い手がいなくて困っているらしい。最近になってそういう話を頻繁に耳にするようになった。一時の不動産投資ブームに乗って買ったはいいが、売れずにもてあましている人が増えているというのだ。
タイには固定資産税がないので、どれだけ不動産を持っていても税金を納める必要はない。なので資産があるなら買うのは問題ない。しかし十分な資産がないのに無理して買った人は厳しい。転売による利益が目的でローンを組んで買っているなら毎月の支払いが必要になる。そのためアパートを借りるより高い支払いに追われている不動産所有者がかなり大勢いるとも聞いている。
だから早めに売りたいのだが、買い手がいない。庶民は手元に現金がなく、無理してローンを組む以外に買う方法がない。つまりタイは言われているほど好景気でもないし、金が余ってもいないのである。
コンドミニアムはいまも建築ブームの真っ最中だ。いったい誰が住むのか疑問に思えるほど高価な物件が次々と建てられ、売りに出される。日本で「億ション」と呼ばれる億を超える価格の物件も珍しくないが、それでも売れている。これらは自分で住むこともあれば、転売目的も多い。いわゆる「土地転がし」というやつで、転売を繰り返して価格を上げ、利益を増やしていくのだ。
金は庶民の頭のはるか上の、さらにその一部だけで動いている。それでも動いたことには変わりない。一般庶民の生活とは無縁の世界で金が動き、経済データの上では景気がよくなったように見える。
「タイは景気がいい」といった内容のニュースや記事を目にすることもあるが、本当にそうなのだろうか。ただそのように見えている人が、単純にはやし立てているだけではないのだろうか。この手の調子のいいニュースを目にするたびに、だまされている人もいるだろうなと、あらぬ心配をしてしまうのである。
開発が進むバンコク中心部。大型のコンドミニアムが次々と建つ
一戸数千万円のコンドミニアムが目白押しのバンコク。いったい誰が買っているのか