バンコクの都バス。現在、バンコクの都バスの一部は乗車料金無料サービスになっている。
都内の老朽化した橋や高架。スクムパン都知事は都内の老朽化した橋や高架の修理を開始すると宣言したが……
税収難に直面したバンコク都。職員たちはこの困難な局面をどうやって乗り切るのか?
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タイ国の税収が減っているそうだ。景気が悪く、モノが売れない時代なのでしかたがない。これは世界のどこも同じである。
政府は酒とタバコの増税を決定し、実行した。それによって酒類から得られる税収は増えたらしいが、タバコは減ったという。もっともこの増税の目的は税収アップではなく国民の禁欲推進なので数字は関係ないのだが、少ないよりは多いほうがいいはずだ。
政府はなんとか国民の出費を抑えようと賢明だ。そうすることによってこの経済危機を乗り越えられると考えているフシがある。しかし、節約や倹約で税収が増えることはない。国内消費を押さえるなら海外に向けての販売力強化や外国人旅行者の消費を推進しなければならないが、景気は世界全体で悪いので、モノを売ろうにも買ってくれる国がない。首相は中国やインドが好調と言っているが、そこではタイより安く物品が売られている。政府はタイのなにを彼らに売ろうとしているのか?
こうなったらこの国でもっとも金になる観光業に力を入れて外国から客を呼びこみ、国内を活性化させるべきだと誰もが考えるはずだ。観光面での魅力はまだまだあるし、すべてを出し切ったわけでもない。そこでタイ国政府観光庁(TAT)は観光旅行推進キャンペーンを始めたが、なぜかターゲットがタイ人になっている。旅行は金とヒマがあってできるもの。仕事がなく、ほとんどの人の収入が減っている時代に「積極的に旅行して遊びましょう」と呼びかけるのはなんとも呑気な話である。バンコク都庁の税収難も深刻で、職員の給与カットも始まっている。こんな状況で、いったい誰が優雅に旅行できるのか?
政府は低所得者の公共料金を無料にしてもいるし、バンコクの都バスは一部で乗車代金が無料になっている。庶民への生活援助は行われているが、これらにはすべて税金が使われている。いくら節約していても税収が増えなければ、いずれは支払いに行き詰まる。
政府発表は楽観論ばかりだが、国民はすでに気づいている。アピシットはタクシンを越えられるのか。首相の肩に総選挙以上の試練がのしかかっている。
(月刊ワイワイタイランド2009年9月号)