オフィス移転中の某日系企業
バンコクの家賃の高さが問題となりつつある
工事の動きすらない更地
普通に見かける光景だ。
世界経済の鈍化が利用客数の激減となって示されているスワンナプーム空港。
このところ、どこに行っても「タイの景気はどうですか?」とたずねられる。だから、ここで書いておくことにしよう。タイの景気は悪い。世界の他の国々と同じように。
交通量の少なさを見れば、それはすぐにわかるはず。名物の渋滞はあるものの以前ほどひどくはなく、夜間は週末でもすいすいと走ることができる。ガソリンの高騰もあり、みんな無駄な移動をしなくなったのだ。
製造業関係の工場や会社が多い国なので、その方面のさびれ具合もひどい。タイに赴任していた日本人の知り合いも続々と本帰国になっている。後任が来ない会社も多く、あとはタイ人だけで仕事をするのだ。おかげで日本人御用達の日本料理店は利用客が激減し、経営が成り立たない店も出始めている。
オフィスの移転もさかんに行われている。その場合、現在より家賃が高かったり広かったりすることはほぼない。タイ系外資系を問わず社員の勤務時間を減らし、その分だけ給料を下げるサラリーカットも普通におこなわれている。嫌な人は辞めてもらい、補充はしない。どの会社も社員はなるべく減らしたいので人材派遣業者は仕事がなく、かなり苦しい立場に置かれているという。
このような状態になっても政府は効果的な政策を打ち出せず、それどころか増税策を検討し、一部は実行している。ガソリンと税金は上がり、給料は下がる。まるで日本と同じではないか。
ただ、それでも97年の経済危機の時に比べると、タイの国民はそれほどあわてていないように思える。あのときは国全体がパニックに陥って派手な自殺者が続出したり、神ならぬ仏頼みで寺院に走る人たちが続出した。タイ人は、景気の悪さや落ち込みに慣れたのだろうか?
いや、そうではない。彼らは景気が低迷している原因を知っている。知っているから黙っているし、あわてもしないのだ。彼らはまだ最後の切り札を手に持っている。それを公にする日は、ひょっとしたらもうすぐかもしれない。