ワット・サパーン・ヒンの頂上に至る石段。惨劇はここで起こった
北のチケット売り場からワット・サパーン・ヒンに向かう道。昼間でもひと気はない。
被害者がチェックインを試みようとしたゲストハウス。しかし、深夜の1時では遅すぎる。
昨年の11月末に発生したスコータイ遺跡での邦人殺人事件。有名な世界遺産の地で発生した残虐な事件で、ニュースは日本のマスコミでも流されたから記憶している人もいるだろう。
しかし、すっかり忘れていた人もまた多いのではないか。なにしろ事件発生から3ヶ月近くが過ぎたいまでも犯人は見つからないどころか捜査しているのかもはっきりしない状況が続いているからだ。
タイを代表する観光地での事件である。タイ政府は発生直後から迅速に動き、当時のタイ首相の直接指示で観光スポーツ省の大臣が現場を視察。その場で「数日以内によい知らせがある」と発表したりもした。ところが…
いまだになんの知らせもない。すでに現地の疑わしいタイ人はすべて捜査の対象からはずされ、かわって浮上したのが日本人真犯人説。地元の英字新聞にはこの人物の顔写真まで出て、だれもが「この男で確定!」と思ったが、逮捕されたという話は聞こえてこない。これでこの人が犯人でなかったら新聞社はどうやって責任を取るのだろう。
ともかく犯人は現在の時点でも確定されていない。つまり日曜日の朝に日本人女性を刃物で殺害した人物は、いまもどこかで普通に暮らしているのだ。これは怖い話である。というのは現場となったワット・サパーン・ヒンの周辺は、なにが起こっても不思議ではないほど一日中ひっそりしている場所だからだ。
日本人同士の争いでないなら悪意ある何者かによる物盗りあるいは暴行目的の犯罪と考えるしかない。犯人を逮捕して罪には罰が待っていることを知らしめなければ、同様の事件はまた起こってしまうだろう。スコータイはタイ有数の観光名所だから獲物の数には困らない。
それにしてもタイ警察は、なぜ日本人犯人説をリークさせたのだろう? そうしておけば被害者の遺族の怒りの矛先がタイに向かないからと考えたから? 真実はさて、どうなのか。この世で知っている人間は犯人のみ…