バンテアイ・スレイに向かう旅行者の一団。
カンボジア観光も楽になったものだ
遺跡内はまるで写真撮影会場のよう。
観光地ではあたりまえの光景か
こうなると記念写真を撮るタイミングを計るのも難しい
戦争が終わり、新しい時代が始まった
タイの日系旅行代理店のスタッフがアンコール・ワットへのパッケージツアーに参加した。内容と詳細は54ページの「タイ国内旅行」を参照いただけると幸いですが、その話を聞いたときは「隣の国だから気楽に行けるだろう」くらいにしか思わなかった。実際、言葉もバーツも通用するし、タイ人だったらなおのこと問題はない。しかし、ツアーから帰ってきた人たちが撮ってきた写真を見てビックリ。そこってどこ? 本当にアンコール・ワットの遺跡群なのかい、と思わずうなってしまうものだったのだ。
とにかくムチャクチャな人の多さにまずビックリ。造りと規模からバンテアイ・スレイと思われる写真には観光客がぎっしりいて、肝心の遺跡がよく見えない。整備作業は続けられていたが、まさかこんな軽い雰囲気になっているとは……。最初にこの遺跡に行ったのは15年ほど前のことで、見学の際は地雷とゲリラの襲撃に備えて自動小銃を持った兵士が同行してくれた。当然ながら、そこまでして観光する人間はほとんどおらず、周囲は静寂そのものだった。それもまた怖い話だったが、ジャングル内の遺跡タ・プロームもそうで、撮られた写真はどこも人だらけ。記念写真ならいいけれど、これでは写真集などに使うアートな写真などは撮れそうもない。
どうにも気になったのでカンボジア政府観光局のHPを見たら、「観光上まったく治安面での不安が無い」という一文が赤色で強調されていた。初めてカンボジアに入国し、ゲリラと地雷にビビリながら観光していたころは「もしもこの国が平和だったらなあ」「戦争が終わればなあ」と毎日のように思ったものだが、それがいま、どうやら現実のものとなったらしい。
しかし、このツアーに参加した女の子、ジャングルに沈む夕日を見るのを楽しみにしていたのに観光客が多すぎてビューポイントのプノン・バケン遺跡に登ることができず、非常に悔しがっていた。私が行っていたころは頂上に10人も人がおらず、いつも夕日を独占していたものだが……。
いやいや、それでも世界は平和がすべて。いくら観光客が増えて雰囲気が壊れても、銃に撃たれて死ぬよりはましでしょう。