バンコクの街に突如現れた装甲車
筆者フジイもVサインで記念撮影
記念撮影場(?)は順番待ちの盛況だった
9月19日夜、バンコクの街で携帯電話のメッセージが飛び交った。
“クーデター勃発!”“タクシン追放?”“戒厳令か!”
テレビ番組はすべて中断され、かわりに革命軍のメッセージが流されると、外務省は即座に反応して警告を出した。
“タイへの渡航の是非を検討してください”
日本のテレビ番組のニュースで知ったみなさんは、さぞかし驚いたろう。
──ただごとではないことがタイという国に起こっている
いや実際に、起こっていた。多くの日本人が驚いたそのとき、タイではクーデターを起こした兵士率いる戦車の前で市民が記念写真を撮る、通常では見られない楽しい光景が展開していたのである…。
これにはびっくりしましたね。クーデターの翌日は学校や役所が休みとなり、市内には人の気配もなくなって緊張した風が吹いたようにも思えたが、普通の生活が始まったさらに翌日は緊張どころか逆に弛緩する空気に満ちていたのだ。
戦車のまわりには見物人たちで人だかりができていた。女子学生は軍服の兵士と並んで記念写真を撮っているし、オヤジは自動小銃を片手に勇者のポーズまで決めている。これまでのクーデターには“悪の政府に荷担する軍隊VS正義の学生と市民の団結心”の構図があったのだが、今回はまったくない。それどころか“汚職にまみれた不敬な首相一族=悪VS王室をお守りする軍隊=正義”の関係になっていたから、人々は兵士たちを「国を救った愛国者」と見ているのだ。
危険な予測もあったのかもしれないけど、今回は最初からクーデターという言葉を使うこと自体がおかしかったようだ。だったらなんて言えばいい? ただのタイ風政権交代行事でしょうね、やっぱり。
日本からかかってきた電話に私は「クーデターってのはタイ語で国会解散って意味なんだよ」と言って安心させたが、あながちデタラメでもないんじゃないかな。