一般庶民には無縁の商品が並ぶ別世界のショッピングセンター、パラゴン。
リゾート地パタヤーは昔からマフィアの暗躍で有名だ。
これは世界共通のサイン。出すときは命がけで。
場所はバンコクの中心、サイアム・パラゴン。ロビーにいるのは若い白人男性といちゃついているタイ人女性。その彼女、パラゴン自慢のシースルーのエレベーターに乗ったら英語で「怖い怖い」とはしゃぐことしきり。よほど興奮したのか最後は“Fuck!”“Shit!”と大声で何度もご連発だ。訳せば「小便チビリそう!」(?)でたしかにかなり怖そうだが、現場はバンコクで最先端にエレガントかつ豪華なプレイスで、しかも超密室といえるエレベータの中だ。ダーティワードを口にするのがクールだと思っていたのだろうが、同行していた白人男性のいたたまれない表情が印象的だった。“Fuck”はハリウッド映画ではよく使われているが、下手に使うと周辺の空気が変わることも覚えておかなければならない。
そんな状況に遭遇した矢先、今度は日本からやってきた知人が怖い思いをしたという話をしてくれた。パタヤーでバイクを借りて走らせているとき、後ろからあおってくる車がいたので運転している男に向かって中指を突き立てたらしい。そしたら相手は火に油を注いたがごとく逆上して追いかけてきて、宿泊先のホテルまで殴り込んできたんだとか。ホテルに限らずタイには責任回避の考え方があるので、フロントの職員が彼らの部屋番号を教えてしまったから大変。おかげで脅迫電話が鳴り響き、夜も眠れなかったとか(部屋を替えても番号を教えるので意味がない)。
ずっと前、チェンマイにいたとき、無謀運転に腹を立てたドイツ人がバイクに乗りながら同じように中指を突き立て、相手にその場で射殺されたという新聞記事を読んだことがある。タイ人の拳銃所持率は高いから、このとき友人が撃たれなかったのは幸運だ。怒りが脳天を貫くと、どんな人間でも制御できない行動に出てしまうのだ。それがもし、紳士からほど遠い人間だったり、あるいはクスリの常用者だったら……。
みなさんも、海外では調子に乗らないようにしましょうね。映画の真似をするのもいいけれど、タイの現実は恐怖映画より怖いことを忘れずに。