ファーン手前の山の上から町を見下ろしていた大仏像。
お爺さんが住んでいる離れの一戸建。居心地はよさそうだ。
お爺さんと筆者のツーショット。年齢が倍以上も違う。
家の裏庭では乳牛も飼っている。
広大な農場では特産のニンニクを栽培していた。
農産物がよく採れるため、山間の村々も極貧ではなさそうだった
先日、バイクに乗ってチェンマイの北にあるファーンという小さな町に行った。その町の主力産業は農業で、郊外の山中のあちこちに農園が広がっている。育てられている作物はみかんやブドウ、タマネギ、ニンニクなどで、これがまたタイらしくないと言うか、どこもきちんと整備され、育てられていた。まるで日本の大規模農場のようで、私はその美しさに驚いてしまった。
そんな町に知り合いが住んでいたので、出向いたついでに泊まらせてもらうことにした。その家もまた広大な農場を持っており、裏では米や畑、みかん農園、それに乳牛まで飼育している。みかん農園には専用の管理人を住まわせているが、彼らもまた農園内に立派な自分たち用の一戸建を持っていて、こうなるとどこからどこまでがその家の土地なのかわからない。タイって国は広いんだなと、あらためて実感したものだ。
そんな敷地の中に小さな木造の家があった。軒先には高齢のお爺さんが座っていて、話かけたら、ここの地主の爺さんだと言う。歳を尋ねたら、なんと今年で92歳。しかし彼はそんな年齢になっても元気で、離れにあるトイレにも一人で行けるし、食事は近所で好きなものを買ってきて食べるし、布団も自分でひいて寝る。
「歳なのに元気ですね」
と冷やかしたら、
「体は歳だが、頭の中はまだまだ子供だよ」
と、自分の頭を叩きながら軽妙に答えた。質問に対してギャグで答えるあたり、まだまだ若い。すかさずその若さの秘密を尋ねたところ、
「小食、適度な運動、睡眠」
とのご返事だった。運動とは家の横にある爺さん専用の畑での農作業で、もちろん農薬なしの自然栽培。住んでいる一戸建ても平屋ながら自分専用で、彼は家族を気にせずマイペースで暮らしている。
こんな生活なら長生きできるのも無理ないが、やっかいものとして扱われがちな日本の老人たちにこの暮らしを見せたら、きっとうらやましがることだろうなあ。