みんなこぞって身につけているチャトゥカーム・ラマテープ。
しかし、この人はまだ幸運に巡り会っていないとか
ついに出たチャトゥカーム・ラマテープ・Tシャツ。
ずらっと並んだプラクルアン。
敬虔な仏教徒の収集心をくすぐる
タイ人は信仰心の厚い国民だ。宗派に限らずみんな熱心に参拝に行くし、なにがしかのお守りグッズは必ずと言っていいほど身につけている。わかりやすい例として、近くにいるタイ人の胸元のあたりに注目してみよう。仏教徒であれば、そこにプラ(プラクルアン)と呼ばれる小さな仏様の像が下げられているはずだ。王室を愛しているなら、それがラーマ5世か9世のお顔になっている。これらは強い霊力を持ち、身につける人にご加護を与えるとされていて、真の価値を探るマニア向けの専門誌も多数出版されている。
そんなお守りグッズに異変が起こっている。彼らタイ人の首から下がっているプラクルアンがやたらと大型化しているのだ。ものによっては大判焼きくらいのサイズがあって、見ているこちらの首が凝りそうなほど。それが最近のタイで大流行している仏式のお守り、チャトゥカーム・ラマテープだ。
いまから20年ほど前にタイ南部ナコーンシータマラート県のワット・プラナコンで作られたのが始まりで、当初はまったく静かに売られていたが、強い霊力、とくに災難よけに効果があるとの口コミが広まり、国を挙げてのブームになってしまった。国王でさえも身に付けていると聞いたら、その御利益に授かろうとする人が出るのも無理はない。
それが昨年あたりから投機的なブームとなり、限定販売に殺到した民衆に踏みつけられた女性が圧死したり、買えなかった人間が製作業者の家に押し入って射殺されたりと、幸福を超えて災いまでもたらすようになった。強すぎる霊力がそうさせるのかもしれないが、人々はそこまでして仏のご加護(あるいはご利益?)を求めようとしているのだ。
信心深いのは悪くない。しかし、私のような信仰心の薄い人間の目に重なるのは90年代後半のタイ版バブル崩壊のシーンだ。このときも、メチャクチャになった経済に失望した人たちはこぞってお寺に行き、身を清めたり僧侶からお払いを受けたものである。
必死の救済を求めるあのときの信仰熱となんだか似ているような気がするこのチャトゥカーム・ラマテープの大ブーム。大丈夫なんだろうか、この先のタイは?