外国人旅行者が巻き込まれた爆発現場。
翌日から普通に営業
深夜0時直後に爆発した電話ボックス。
教えてもらわなければ、ここが現場とは思わない
狙われたセントラル・ワールド前。
大晦日は数万人規模のパーティが開催される予定だった
だれにでも忘れたい過去はあるものだ。タイの場合、それはどうやらテロらしい。
タイの南部では“信じられない”数の暴力テロ活動が、それこそ毎日起こっている。爆弾、銃撃、放火にリンチと、あらゆる方法で死傷者が増やされ続けている。先日のタイ字新聞は、銃撃を受けたあとにガソリンをかけて焼かれた人間の黒こげ死体だった。見出しは「南部の教師の運命」──想像を絶する憎悪がこの地域には満ちているのだ。
しかし、こうした過激な暴力の事実を知っている日本人はほとんどいない。日本のマスコミが日本人に向けて報道してくれないからだが、それはいったいなぜなのか。タイ政府が情報統制しているらしいという噂はあっても、真実かどうかはわからない。ただ「忘れたい過去はすぐに忘れる」この国の政策あるいは国民性──それがいいことに思えることもあるのだが──が、事件を深刻なニュースにさせない原因になっているような気もしている。
それを強く実感したのが、先日の首都バンコクでの爆弾テロだ。大晦日のにぎわいを狙った悪質な犯行で、規模は小さいが半日の間に8カ所で爆発し、30人以上の死傷者が出た。毎年100万人以上の国民をタイに入国させている日本への影響も必至である。
この組織的なテロ行為にタイ政府はどのような対応を取るのか興味津々……と言ったら不謹慎だが、現行暫定政府の実力の見せ所ではあっただろう。しかし関係者たちが最初にやったことは、徹底的なテロ現場の清掃だった。
翌日、現場に行ってみたが、驚くほどきれいになっていたのでビックリ。事件があった雰囲気が見事に消されているどころか複数の怪我人が出たレストランで普通に外国人が食事しているを見て、さらに仰天してしまった。流血の惨事を知らないのか、それとも店が隠しているのか、知っていながらリラックスしているのか……。タイではこういう行為を“パクチーを振りかける”と言うが、その手並みの速さには正直驚いた。
はたして現行政府は今回のバンコクでのテロの犯人を摘発することができるのだろうか。それともこの事件は、すでに「忘れたい過去」の仲間入りしてしまったのかな?