日本の夏は激暑のようだが、今年のタイは北部と東北部を中心に大雨となっている。数日前に私用でチェンマイに行ったのだが、街の中心を流れるピン川が増水していて、街が浸水するまであと数10センチの状態になっていた。しかし5、6年前の大雨の時に比べればまだましで、今のところは大丈夫かな……と思っていたのだが、翌朝になって知人のタイ人女性から電話があり、「家が浸水しそうだから助けに来て!」と言うではないか。
それで激しい雨の中、バイクにまたがり市街の北メー・ジョーにある彼女の家に向かったのだが、道路がところどころで小川と化している。これはかなりまずいぞと急いで家まで駆けつけたが、避難の準備はすでに始まっていた。彼女の家の裏には運河が流れていて、普段はそれがいい雰囲気になっているのだが、今は増水して水位が床下5センチくらいにまで達している。このままの調子で雨が降り続けば、数時間後には家の中まで水が入ってくるだろう。とにかく動かさなければならないのは買ったばかりの冷蔵庫で、つまりは彼女の宝物。2階に運び上げたいが大きくて重いから動かせず、近くに住んでいる友達に声をかけたが女ばかりしか集まらず、しかたがないから私を呼んだらしい。
ちなみに冷蔵庫の値段はいくら?と尋ねたら2万バーツで、高価な商品には違いないけど、ムムム? 考えてみたら私が右腰に下げているデジタルカメラは1台3万5千バーツ、左腰のビデオカメラは6万バーツもしたではないか。「雨で転んでカメラを濡らしたら、その冷蔵庫が浸水するより被害が大きかったぞ!」ふいに我に返って言ってみたが、しかし誰からも相手にはされないかった。「それはあなたが日本人だからよ。タイ人には、それはそれは高い買い物なのよ!」たしかにそうかもしれないが、もし転んで機材をすべてダメにしたら、彼女たちはなんて言うのかな。「日本人の男は親切ね」だろうか。いや、やっぱり「死ななくてチョク・ディーね」で終わりかな。
今は北部にあるこの水が、来月にはバンコクに流れ込む。勇んでカメラを壊したりしないよう、バンコクでは冷静に対処することにしよう。